フードD2Cスタートアップのトップリーダー、パンフォーユーとゴーフードが語るD2C事業の現状と未来

「新しいパン経済圏を作り、地域経済に貢献する。」をミッションに掲げる株式会社パンフォーユー。

「人々をカッコよく元気に。」をミッションとし、「すべてのひとが健康的な「食」を選択できる世界を創る。」をビジョンとするゴーフード株式会社。

「D2Cブームを追い風に、ブランド支援によって“地元”に活力を」といったメッセージを掲げ、新しいチャレンジをするブランドや生産者の方々を支援する株式会社ピアラベンチャーズ。

その3社による今話題のD2C事業について、現在の状況と未来について存分に語っていただきました。

業界リーダーのフードD2Cスタートアップが見る市場の今

ピアラベンチャーズ 中(以降PV中):まず、簡単に事業内容を説明していただけますか。

パンフォーユー・山口取締役:パンフォーユーは、地域のベーカリーさんの焼き立てパンを冷凍×ITの力で全国に届けるプラットフォームです。個人向け冷凍パンのサブスク「パンスク」や、オフィスでの福利厚生サービス「パンフォーユーオフィス」などを提供しています。「「魅力ある仕事を地方へ」というビジョンをもって経営をしています。

パンフォーユー設立当初に提携するパン屋さんは群馬県が多かったですが、それは群馬県が創業の地でもあり、地元のおいしいパン屋さんのパンをお届けしたいという想いから始まってるからです。現在、提携パン屋さんは全国に広がっています。

パン市場の話でいうと、全般にパン自体の価格が高くなってきていて、高級食パン専門店や、海外ブランドの有名店も出てきています。

都市部ではパンに高いお金を払う文化が出てきていますが、地方を見ると同じクオリティのパンを都市部と比べて半額以下で売っている現状があります。これをうまく冷凍で流通させる仕組みができればチャンスがあると思いました。

ゴーフード・岡社長:ゴーフードを起業したのは、自身が2013年くらいから糖質制限を始めていたことや、元々陸上100mの選手でもあり食事には敏感だったことがきっかけです。これまでにも何度も起業し、売却するなどしてきて、2019年に新しく事業を始めようと思った時に、UberEatsなどデリバリーのプラットフォームも出てきていましたが、糖質を抑えた商品がないのはすごくストレスでした。

であれば、自分が糖質を抑えた商品を提供すればストレスも少ないし、当時はそれほどデリバリー事業の競合も多くないように思えたのが起業のきっかけの一つです。UberEatsなどのフードデリバリーに乗せなかった理由は、半径3kmの商圏ごとにゴーストレストランを作る必要があるし、プラットフォームの手数料など、事業をスケールさせる上でネックになる部分が多かったので、冷凍の通販をやることにしました。

D2C事業をうまく活かせるための市場的条件とは?

PV 中:最近では冷凍技術が飛躍的に発展しましたが、恩恵はあったりしますか?

パンフォーユー・山口取締役:市場が如実に伸びている、という点で、大変恩恵を感じています。パンフォーユーは、独自の冷凍技術をもっており、特別な機械がなくても1ヶ月以上保存可能な方法を、パン屋さんに提供しています。それだけでなく、冷凍食品もいくつか種類があり、瞬間冷凍機(ショックフリーザー)ですぐに凍らせてしまうものもあって、パンも美味しくなってきていますよね。

冷凍物流の量は増えており、ふるさと納税などは冷凍で頼まれるものも多く、冷凍で食品が届くこと自体のマーケットも大きくなっています。

業務用冷凍パン生地の市場というのも元々あって、この市場も順調に伸びています。パンでいうと近隣のベーカリーに声をかけるのがこれまでのホテルのやり方でしたが、近隣にいいパン屋がない場合でも冷凍技術によって高品質なパンをホテルに提供できるようになりました。

D2Cスタートアップの競合と成功のための必須要件とは?

パンフォーユー・山口取締役:パンはとってもデリケートなので、美味しく食べていただける仕組みを日々模索しています。パンスク会員の方にはサイトで、届いたパンの美味しい食べ方をパンの種類ごとに紹介しています。

PV 中:コンビニは強敵だったりしますか?

パンフォーユー・山口取締役:コンビニのパンは美味しくなっていて、すごく脅威だと思っています。冷凍コーナーのスペースも大きくなっていて、冷凍パンをコンビニでも扱い出しています。ただ、私たちは冷凍パンを売るだけではなく、「パン屋さんとの出会い」を提供したいという考え方なので、物で勝負するよりもサービスで勝負したいと思っています。

ゴーフード・岡社長:食を選ぶシチュエーションって色々あると思うので、どこかの食事の選択肢としてゴーフードは入れたらいいので、市場が伸びていることは歓迎しています。

フードD2Cスタートアップを成功に導くために必要なことは?

PV 中:なるほど、ありがとうございます。両社とも食品のサブスクを提供していますが、サブスクに合う商品、合わない商品はあると思いますか?

ゴーフード・岡社長:我々のようなお弁当はそもそもサブスクに合いにくいと思っていて、定期的に食品を送っていく場合は段々溜まってくることもあります。定期購入だけではなく、頼みたい時に注文する都度購入も必要なので、むやみに定期を推さないようにしています。

パンフォーユー・山口取締役:パンスクもお客様にあったプランを選んでいただきたいので、お届けのサイクルは選んでいただけますし、定期であっても休会やスキップもできるようにしています。

PV 中:最近ではコロナで飲食店などが閉店していますが、影響などはありましたか?

パンフォーユー・山口取締役:飲食店が閉まった影響かはわかりませんが、パンフォーユーのなかでもパンスクは注目してもらう機会も増えているので、おうち時間充実のなかで伸びてきています。そのなかでもさまざまなメディアでご紹介いただいた影響は大きかったです。

ゴーフード・岡社長:ゴーフードは販売開始がコロナ直前であり、それでいうと伸びた感じはありました。

ずっとコロナの中でやっているので、昨年対比などはありませんが、全体的に見れば宅食市場は伸びていると思います。

フードD2Cスタートアップが考えられる市場開拓領域と海外展開

PV 中:飲食店の閉店で、在食市場全体が伸びているということですね。その流れに乗って、ラインナップの充実などは考えているのですか?

パンフォーユー・山口取締役:はい。パン、というカテゴリの中で、考えられることはたくさんあります。健康上の理由から、パンを食べたくても食べられない人にも、食べていただける商品も展開を考えています。 ゴーフードさんにも相談していますよ。

ゴーフード・岡社長:糖質を抑えた食事というのはブラさず、ゴーフードでも、商品は増やしていこうと思っています。特に自炊では作りにくい商品を出していこうと考えています。魚を焼いたりするのは大変なので、その辺りの領域を考えています。その他には、糖質がどうしても高くなるお米を代替した、低糖質・高タンパクの「ダイズライス」を主力メニューとして展開します。

PV 中:海外展開などはいかがでしょうか?

ゴーフード・岡社長:ゴーフードは設立当初から考えていました。海外で展開できるものから逆算して事業選定した部分もあります。

パンフォーユー・山口取締役:パンフォーユーも考えています。海外展開は二つあって、日本で冷凍した商品を持っていく場合とこの仕組み自体を向こうに持っていく2つのパターンを考えています。

東南アジアなどもちょっとコロナであれですが、日本で修行して戻って開業する人たちも結構いて、東南アジアから見るとレベルも高いです。

フランスから見るとどう見られているかわかりませんが、アジア圏への進出は積極的に考えています。こっちでパンを作って持っていくとコストが高くなるのでレシピ自体を輸出するなどもありではないかと思っています。

フードD2Cスタートアップの未来と組織制度について

PV 中:市場動向として食領域のサブスクは増えていくでしょうか?

パンフォーユー・山口取締役:増えるでしょうし、実際に増えています。スナックミーはとても興味深く、全員に違うラインナップを送っていて、すごくパーソナライズされているのは本当にすごいと思います。

行動様式の変化については宅食市場が伸びている中で、Spartyさんもパーソナライズ シャンプーなども定義しているし、パーソナライズ 文脈はくるだろうと思っています。

ユーザーのデータをちゃんと取得していくのは当たり前で、裏側のオペレーションの部分をシステム的に構築できるかがとっても大事になっていきます。

今まではパンスク商品を送るだけでしたが、ピッキングするアプリを提供するであるとかパーソナライズ に対応できるシステムを開発中です。

ゴーフード・岡社長:ゴーフードとして思うのは、過去にいろんな事業をやってきましたが、ITの事業と比較して、製造というものが絡むと相当難しいということです。競合はウェルカムですが、上手く事業を進めるのは非常に困難なのでそんなにうまくできないから、安易にやらないほうがいいですよ、とは思っています。

低糖質な食品のD2Cという領域では、ゴーフード以外でも多くの企業が参入してきていますが、弊社ほどの価格で販売できるところは少ないはずです。

事業成功に導くためのフードD2Cスタートアップの必要な組織体制とは

PV 中:最後になりますが、組織体制について教えてください。

パンフォーユー・山口取締役:パンフォーユーは現在4つのサービスを提供しています。個人向け定期便サービス「パンスク」、オフィス向け福利厚生サービス「パンフォーユーオフィス」、百貨店や飲食店などのニーズにあわせた焼成済み冷凍パンを小ロットから発注できるサービス「パンフォーユーBiz」、職人・焼成機械・スペースがなくとも冷凍庫さえあればパン屋さんを開業できるサービス「ゴーストベーカリー」です。

4つのサービスを、個人向け事業と法人向け事業で分けています。それぞれの事業ごとに、システム開発や営業、事業企画、CSなど必要なメンバーで構成されています。

マーケティングのチームは、全社の組織が紐づいています。

ゴーフード・岡社長:ゴーフードは4名でやっていて、商品開発などの際には全員でやりますが、普段の業務はある程度分かれています。

パンフォーユー・山口取締役:パンフォーユーの場合は未経験の分野にチャレンジしたい人を採ることも多いですが、大手企業でマーケティングや、経営企画といった経験がある人も採用しています。

経験の有無も大事ですが、いずれにしてもミッションに強く共感する人間でないと厳しいと思っています。朝令暮改が結構起きるので、どこでも動ける人間であることを意識して考えています。別の会社でのことですが、めちゃめちゃスキル高いと思って採用しても、ビジョンが共通していないことをきっかけに失敗した経験がありました。

ゴーフード・岡社長:ゴーフードの場合は前職の上司だったり、大手パーソナルジムの元トレーナーだったり、留学していた時代の同期など、現在は元々の知り合いのみでやっています。採用に関してはスキルよりもマインドを重要視しています。ベクトルが一致しないと大変なことになるし、ミッションやビジョン、ゴーフードとしてやるべき社会課題の解決に共感してくれる人であれば、ちょうどプレシリーズAの資金調達を完了したところですので、そこに共感してくれる人であれば積極的に採用していきたいと思っています。

■パンフォーユーについて

パンフォーユーは、地域のパン屋さんが抱える運営や販路拡大などのあらゆる課題を、独自の冷凍技術とITによって解決し、パン業界のDXを推進するスタートアップ企業です。「地域パン屋のプラットフォームとして、地域経済に貢献し、新しいパン経済圏をつくる。」をミッションに、独自のパン冷凍技術・パン屋さん向けSaaSプロダクト・販路拡大戦略を活用し、全国の消費者とパン屋さんをつなぎ、パンを「作る人」「売る人」「買う人」三方良しのプラットフォームサービスを提供しています。

事業内容:

・個人向けパン宅配サービス「パンスク」の企画、運営:https://pansuku.com/

・法人向けパンサービス「パンフォーユーオフィス」の企画、運営:https://office.panforyou.jp

・冷凍パンを活用したパン屋開業支援サービス「ゴーストベーカリー事業」の企画、運営:https://ghost_bakery.panforyou.jp

・パンのOEMプラットフォーム「パンフォーユーBiz」の企画、運営:https://biz.panforyou.jp

■ゴーフードについて

すべてのひとが健康的な「食」を選択できる世界を創る。少子高齢化が進む日本。生活習慣病患者数が年々増えている状況下で、この大きな課題を解決するためには、毎日の食事の改善であると思い、ゴーフード株式会社を設立いたしました。より美味しく より健康に。豊かな生活には心身ともに健康であることが 必要不可欠であると考えています。 ゴーフード株式会社は、お客様のご家庭の 毎日のお食事を手間なく、より美味しく、より健康にできることを目指します。

事業内容:

・GOFOOD(ゴーフード)の運営:https://gofood.jp/shop