【ピアラ・飛鳥社長インタビュー 前編】なぜ子会社でファンドをやろうとしたのか

ファンドを立ち上げた経緯をお伺いしてもいいでしょうか?

ファンドを設立したきっかけは、ここ最近、関東しかヒットが生まれていないことに起因します。資本のある大企業やVC(ベンチャーキャピタル)は関東中心に盛んで、勢いのあるD2Cブランドなども関東発のスタートアップが多いように感じる一方で、地方発のブランドというのはあまり見かけません。ピアラも関西のお客様が多いのですが、関西発の新興ブランドを聞くことは少ないですし、九州などはさらに少ないです。

要因として見ているのは、「新規顧客獲得の広告単価も上がってきているので、D2Cや通販事業の成長に資本的な体力の影響度が上がってきている」という点です。

ピアラもお仕事をご一緒させていただきて勉強させてもらっているクライアントの中には、お客様を大切にされていて手書きで手紙を書いたり、観光客のご案内をしているところもあります。

成功しているクライアントは一辺倒のサブスクリプションでは忘れられているだろうサービスを大切にしており、そのサービスの実現には目先の利益だけでなく長期的な視点で経営に立つ必要があり、資本体力によって大きな差が現れると思っています。ピアラではブランドとして成功するためのサービスの拡充に力を入れていて、昨年には資本体力面の課題解決に対応するために、PIALA PAYという将来債権を買取るデット(債務)の資金調達支援を始めました。

ブランドが東アジア、など海外に進出することについてどう考えていますか?

エクイティ(株式)で調達しているベンチャーだと、急激な成長を実現させる必要がありますが、Facebook、Googleなど主要媒体での配信が天井に来ると獲得も天井になります。10年前、インターネット広告はチャレンジングな会社が活躍していて、大手の広告主や代理店が今ほど本腰を入れていなかった状況でした。そのため各社の広告予算もまだまだ小さく、市場的にも小さかったです。しかし、インターネットの発展と共に広告予算も上がり、大手も参入し始めたことで、オークションプレッシャーが強まり、広告による獲得単価は以前の様な単価では獲得できなくなりました。

そういった意味では、まだ獲得単価の低い海外市場に行くなどもありだと思っています。ハラールをクリアするような日本品質を提供することができるので、イスラム圏をターゲットにするのもありです。競合がいないので獲得単価も安く、日本は東洋の神秘的なイメージを持った国ですし、ベンチャーにとってもそのエッセンスを使えるのは大きいです。ストーリーを国全体で描けると面白いことになると思います。

東南アジアや東アジアに進出するケースは、もう珍しくなくなってきていますが、南米も面白いマーケットだと考えています。メーカーや商社以外で南米に行っているところはまだそんなに多くないですし、チリ・ブエノスアイレスなどの都市部では物価も上がってきており、富裕層人口も増えています。南米でも国ごとにしっかりと都市があり、それなりに購買力がある。アッパーミドル層にうまく刺さる展開ができれば南米でもかなりチャンスがあると思っています。

中南米は人種的にも黄色人種が多いことから肌質も日本人と近く、日本のスキンケア商品が肌に合うことから、日本ブランドの受け入れられるポテンシャルが非常に高い市場だと見ています。

チリ以外だとブラジルも親日国であることから攻めやすい要素があり、南米というイメージがないだけで、意外と上手くいくと思います。

地方ブランドの海外進出について詳しく教えていただけますか?

日本のブランドも海外ではまだまだやれる余地があると思っています。特に海外では獲得単価が低いことに加えて、日本の地方の特産物も売れているので、和食も含めてまだまだ可能性があります。

地方創生などが叫ばれている中、ふるさと納税などもありますが、あくまで国内消費であって海外支援をする企業はあまりいなく、ふるさと納税で成功している事例もそれほど多くないように思います。その点、通販は地域も国境も関係ありません。本来なら地方であろうとも東京に勝てる可能性は充分にあります。

やずやなどの古くから伸びてきた通販などには地方ドリームがありました。ただ現在では減っています。地方は人を大切にしている会社も多いですし、その土地の特産物で育ってきた人たちも多いので、D2Cと相性のいいストーリーがあれば首都圏以外のブランドも成功できるチャンスはあると考えています。

しかし、地方では東京のやり方を提案しても「単価も含めて合いません」とお断りされることが多いです。ピアラは多くの企業のマーケティング支援をしており、これだけ多くの企業様を見ていればどこが勝てるか、どうすれば勝てるかなどの勝ち筋が分かっています。

元々大分前から地方支援の構想がありましたが、地方ではファンドなどにも頼った資本を集める概念があまりないですし、そもそもエクイティでお金を入れる事も少ないです。

ですが、テスト的に話しかけてみると意外と需要もありそうだし、ちゃんと伸びる事業計画と共に融資を受けた会社があり、資金面と共にマーケティングのサポートもすると一気にドライブできるという成功体験もありました。

地方のブランドに地方銀行が貸し、弊社で支援したケースを見て、地方でも再現性が高くやれると確信しました。支援した企業はそのジャンルで日本で一番の売り上げがあり、ジャンルが特殊だったこともあるでしょうが、実績も出てきています。一桁億円の売り上げがあるし、地方ならではのストーリーもあるし、地方でストーリーを語る会社も減ってきているからこそ、安心感もあるのではないかと思います。

後編では「地方ブランドには資本体力が必要なのか?」と題して地方ブランドの可能性について語っております。
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